※僕のヒーローアカデミア原作のRPやる夫スレです※

秘密結社ズヴィズダーは世界征服を企む秘密組織であった!
「我らが世界征服した暁には、かのオールマイトですら成し遂げられなかった
 【世界中のヴィラン根絶】を実現してみせる!」
総帥のトゥマン(本名:間奥羽 霧斗)はこのような主張の下、
世界征服活動と称して個性の無許可使用による治安維持活動を開始。
名を売るために一部犯罪活動を看過するような不真面目なヒーローへの私的制裁と告発も並行して行っており、
一時期は「そこらのヒーローよりも街の平和を守ってくれてる」と活動範囲の住人に評されるほどだった。
しかし世界征服は建前に過ぎず、その裏では違法薬物の密輸入に手を染める悪の組織だった。
組織内部からのリークによりその事実を知ったヒーロー協会は複数人のヒーローによる鎮圧作戦を実行。
首謀者のトゥマンと妻の羅春、組織に所属していた構成員約50名を逮捕した。
これにより当組織は活動停止、解散となった。
(出典:ヒーローマガジン「特集!ヴィランによる組織的活動の歴史」)



今日は体育祭の振替休日。少し遅めの起床を迎えると、寮には人もほとんど残っていなかった
私は日課の自主鍛錬をこなした後、学校に一番近い繁華街へと出掛けることにした
特に目的はなかったが、たまにはそんな日があってもいいだろう
振替休日ということもあってか、街では同じ学校の人や同級生と会うことが多かった
中には見知らぬ顔もいたが…あまり気にせずに他愛のない会話を楽しんだり、
ふらふらと街を見て回ったりと休日を謳歌していた

そんな時だった、望まぬ再会が突然訪れたのは

「あれれ〜?こんなところで会うなんて奇遇っスね、お嬢」

忌々しくも懐かしく聞き覚えのある声を後ろから掛けられ、私は身構えながら振り向いた

『……なぜお前がここにいる…ヤスッ!』

「ずいぶん懐かしい呼び名っスねぇ、俺のことをそう呼ぶのはもうお嬢くらいなもんスよ」

父上と母上の組織を壊滅に追い込み、父上と母上が捕らえられる原因となった男が
口から煙草の煙を吹き出しながら立っていた

        ・

        ・

        ・

お互い積もる話もあるだろうからと場所を移すことになった
近くにあった公園のベンチに並んで腰かける。ベンチの近くには私とヤス以外に人はいない
会話を他人に聞かれることはないだろう

『それで…この街に何しにきたんだ?』

「何しにって…今のオシゴトの都合でちょっと立ち寄っただけっスよ。
 まだ悪いことはしてないから安心していいっス」

『シゴト…この街で何かやらかすつもりか?もしそうなら…』

「そういやお嬢、北英偉高校に入学したんっスね。体育祭の中継にちょっとだけ映ってるの見たっスよ」

『フンッ…犯罪者でもヒーロー学校の様子は確認するんだな』

「まぁね。東の雄英、西の士傑、そんで北の北英偉…次世代のヒーローの卵のお披露目とあったら
 ちょっとは気になるもんスよ」
「けどお嬢…なんでヒーロー科なんかに入学したんスか?
 お嬢の個性ならおやっさんと姐さんが言ってたように間違いなく…」

『ッ!お前が父上と母上のことを口にするな!』

カッとなってヤスの顔目掛けて拳を繰り出す。しかし拳は片手で軽々と受け止められる

「ほーら、武装してないお嬢の拳なんて簡単に受け止められる。
 こんな軟弱な拳でヒーローなんてお嬢にはムリムリ」
「ヒーローになるならもっと強くならなきゃ駄目っスよ。
 例えばそう、おやっさん達を捕まえたヒーロー……オールマイトみたいにね」

『ッ――!お前がっ!父上が禁止していたっ!違法薬物の密輸に内緒で手を染めてっ!ヘマして捕まってっ!』
『取り調べで嘘をついてっ!全部父上と組織のせいにしてっ!お前のせいでぇぇぇっ!』

怒りに任せて拳を何度も振るう。しかしヤスは軽々と躱していく
傍から見てると年の離れた兄妹のじゃれあいに見えるのだろうか
こちらの方を見る者はいても、止める者は誰もいなかった

「あぁ、そうだ。俺が悪いんだろうな。だが、俺の嘘が通用するほどにおやっさんの組織は実績を作り過ぎた!」
「無許可の個性使用による治安維持活動に素行不良なヒーローへの私刑と不祥事の証拠付きで警察への通報!」
「"征服"した地域の治安は向上し、地域住民からはそこいらのヒーローよりも信用を勝ち取ってた!」
「なまじっか一般人の支持があるせいでヒーロー側も大々的に手が出せず、
 徐々に拡大する征服地域に頭を抱えていたのさ」
「『このままではヒーローの出動が減っていき、生計が立てられなくなるのでは』ってな」
「そんな時に俺の嘘という【組織解体の為の正当な理由】が現れた。一般人も納得するような理由が!」
「だからヒーロー達はおやっさん達の組織の壊滅へと迅速に動いた!ろくな下調べもなしにな!」
「つ・ま・り…おやっさん達は犠牲になったのさ。ヒーロー制度の維持、その犠牲にな」

『よくもペラペラとそんな言い訳を!お前はいつもいつもぉ!』

ヤスの言葉を振り払うように拳を振るうも、軽く体を動かされるだけでかすりもしない

「おおっと、ヒーロー志望のお嬢には生々しい話だったかな?」
「けど、オールマイト以外のヒーローなんて大体そんな連中ばかりさ」
「お嬢だって覚えてるだろう?事件を未然に防げるのにヴィランが暴れだすまで動こうとしない、
 俗に塗れたヒーロー達のことを」
「自分達は正義だと、そう吹聴しながらその実
 自分達の金と名誉のために一般人を危険に晒すヒーロー連中のことを!」

『そ、それは……』

拳を振るう腕が止まってしまう
当然覚えてるとも。だって私もそいつらを捕まえるのに参加したのだから

「おやっさん達の行動は法的には間違ってたかもしれない。けど人としては間違っちゃいないはずだろ?」
「なのに現実はどうだ?おやっさん達は悪だと断定されて、職務を怠ってたヒーロー側は何もお咎めもなし!」
「おやっさん達が征服してた地域は新しいヒーローが送られてこなくて
 治安は前より悪化…それもおやっさん達が原因にされている!」
「お嬢が何考えてヒーロー科に入ったか知らないけど、それは本当にお嬢のやりたいことなのか?」
「俺はそうは思わない。お嬢の居場所はヒーローなんかじゃない……
 俺と一緒に行こうぜ?お嬢が本当にやりたいことができる場所に」

ヤスが手を取れといわんばかりに手を差し出す

『わ、私は……』

手を震わせながら、私は差し出された手へと右手を伸ばし……

















『ふんっ!!!』

拳を握り、自分の頬を思いっきり殴りつけた
殴った側の頬が痛い。だがその痛みでぼんやりしてた頭の中がはっきりしてくる
そうだ、これはヤスの得意技だ
畳み掛けるようにあることないこと言って嘘を信じ込ませて思考を誘導する卑劣な話術だ

『…お前の【個性】を忘れるわけがないだろ。ちょっと騙されかけたが…もう私には効かん!』

「チッ……タネのばれた状態じゃ流石に上手くはいかないか。お嬢相手ならいけると思ったんだがねぇ」


旗里 安兵衛(通称:ヤス)
個性:ハッタリ
自分のついた嘘を他人に信じ込ませることができる。
信憑性があり、かつ突拍子のない嘘であればあるほど信じ込ませやすくなる。
ただし一種の洗脳に近い効果のため、完全に信じ込む前に強い衝撃を受けると嘘だとばれてしまう。


「あわよくば勧誘できたらと思ったが…無理なら今日のところは諦めるか」

『に、逃げる気か、ヤス!』

「当然!今のお嬢じゃ俺は倒せないけど、応援を呼ばれたら困るっスからね〜」
「それじゃ、気が変わったらいつでも呼んでくれていいっスよ〜」

そう言い残すとヤスは公園を飛び出し、人混みに紛れて私の前からいなくなった

        ・

        ・

        ・

『……あいつが何を企んでるかは知らないが、今の私じゃ捕まえる力も権限もない』
『もっと強くならないと……今のままで世界征服なんてできっこない…』

体育祭のトーナメントを思い返す。皆が皆全力で闘ってた、そして皆強かった
すごい手品くんは普通科なのに蛍を前に一歩も引かずに向き合ってた
バネ緒はボロボロになりながらもドイツ砂相手に打ち勝った
裕司も新八も芽亜もみんなみんなみんな…凄かった

いつか私も追いついてやる…そう思ってたけど、それじゃ駄目だ
"いつか"なんて言ってる内は永久に追いつけやしない

『…まずは来月の模擬戦の約束、絶対に勝ってやるぞ!』

私の目指す"目標"は果てしなく遠いけど、まずは見えている場所まで全力で頑張る!

私は学校に戻るバスの中で揺られながら、そう決意を新たにしたのであった……

― 完 ―

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